ままごと あそびの のみやさん 作・F.B.Zot

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 あのね、おにいちゃんの がっこうの、どこかの ぶかつでね、「かんげいかい」って いうの、やるんだって。 「のみやさん」って ところで やるみたいだよ。 ぱぱに きいてみたら、「そこは、おとなが おさけを のむ ところだよ」って、おしえてくれたんだ。 でも、はたちに なって いない ひとは、まだ のんじゃ いけないんだって。 だから、ぼくも まだ そこに いっちゃ いけないんだよ。 でも、あの おにいちゃんたち、まだ はたちに なって いないでしょ、だいじょうぶかな。 おまわりさんに つかまっちゃったら いやだな。

 でもね、その おにいちゃんたちの ひとりはね、おさけを のみたくないって いってたんだって。 だからね、のみやさん じゃなくて、べつの ところで やろうって いったんだって。 その ひと、えらいね。 でもね、みんなは いやだって いったんだって。 それにね、「ちゃんと かんげいかいに でないと、ぶかつ、やめさせるぞ」って いってた みたいだよ。 そういう ところではね、のみたく なくても おさけを のまなくちゃ いけない ことも あるんだって ぱぱが いってたんだ。 だから、むりして のんで、べろんべろんに よっぱらっちゃって、ちゃんと あるけなく なったり、げーげー はいちゃったり、おおごえで さけんだり、おとなって へんだね。 だからね、おとなはね、よっぱらっちゃうと、おおきな あかちゃんに なっちゃうんだよ。

 それからね、あの おにいちゃんたちのこと、ぱぱに はなしたらね、「きっと、はやく おとなに なりたがって いるんじゃない?」って いってたよ。 ぼくも はやく おとなに なりたいな。 そしてね、ひこうきの ぱいろっとに なって、せかいじゅうの おそらを とぶんだよ。 でも やっぱりね、おさけは あんまり のみたく ないな。 それにね、よっぱらっちゃって、あばれんぼうとか、あかちゃんとかにも なりたく ないな。 だからね、ぼく、おままごとの ときにも、のみやさんに よらないでね、まっすぐ おうちに かえってくるんだ。 えらいでしょ。 でもね、ほんとうの おとなはね、ままや こどもに はやく あいたいなって、まっすぐ おうちに かえって くるんじゃ なくて、のみやさんでね、あばれんぼうとか、あかちゃんに なってたほうが えらいんだって。

 こんな はなし きいてたら、ぼく、やっぱり おとなに なりたく なくなっちゃった。

出典:1994年1月発行「おあしす」。

解説(2003/09/01):これはフィクションだが、この話の中の、部活の歓迎会で起こった事件は、私の学生時代に聞いた実話を基にしている。まだ未成年の学生のくせに飲み会を強制(部の公式行事として!任意参加ではなく!しかも事もあろうに,飲み屋で!!)という事に関し、問題提起した作品。未成年の学生が酒を飲んで何も言われないのは、大人のお目こぼしを受けてるだけじゃ。それなのに、部活をやめさせるぞなどと圧力をかけてまで酒を飲ませようとするとは何事じゃ。警察にタイ~ホされやがれ。未成年の飲酒という違法行為を取り締まる気など私にはないが、分をわきまえろ。

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