かなづかひ警察出動!

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 私は「かなづかひ警察」。仮名遣の決まりから外れた「似非旧仮名遣」はタイホするぞ!

かほり(香り・薫り)

 小椋佳作詞・作曲の「シクラメンのかほり」の影響なのか、「香り」や「薫り」をわざと歴史的かなづかひつぽく、「かほり」と表記してゐるのをよく見ます。しかし、歴史的仮名遣では、「かをり」が正しい仮名遣です。

 小椋佳によると「シクラメンのかほり」の「かほり」とは、小椋佳の奥さんの名前「佳穂里(かほり)」と「香り(かをり)」との掛詞のやうです。

 厳密に言ふと、定家仮名遣では「香り」は「かほり」となるやうなので、鎌倉時代の古典的仮名遣なのだと言へば間違ひでもなささうですが、近・現代の歴史的仮名遣では「かをり」になります。国語辞典の「言海」(昭和4年、第15版)によると「かほり」「かほる」といふ項があり、それぞれ「かをりノ誤。」「かをるノ誤。」とあります。戦前でさへ表記揺れがあつたのは確かなやうです。

よゐこ

 お笑ひ藝人の名前ですが、もし「良い子」の意味なら、本来は「よいこ」が正しい仮名遣です。

眠ひ、ない、やりたひ、オヒオヒ、などなど

 「よゐこ」と同じでこれも間違ひです。確かに、「い」は文字の先頭を除くと「ひ」と書くことが多いのですが、形容詞の語尾は例外の一つです。形容詞の「~い」は、いつも「~い」であり、「~ひ」や「~ゐ」にはなりませんから、「眠ひ」「大きゐ」等は間違ひです。「ない(無い)」も「なひ」ではなく、「ない」のままです。

 そして助動詞の「~たい」も「~たい」のままですから、「見たひ」「やりたひ」も間違ひで「見たい」「やりたい」のままです。

 なほ、「追々」の意味の「オイオイ」はハ行四段活用動詞の「追ふ」に由来するので「おひおひ」で良いのですが、人に対する呼びかけの「オイオイ」は「おいおい」のままです。「おーひ中村君」なんて間違ひがあつたら、つひつひ、ではなく、ついつい脱力して仕舞ひます……。

ごきげんやう

 恥づかしながら私も長いこと間違へてましたが、「ごきげんやう」は間違ひです。そもそも、「ごきげんよろしう」が「よ」なのに、「ごきげんよう」が「や」になるわけがありませんね。

毎度有難ふ御座います

 ある似非レトロ菓子の缶に書いてあつた文字。「ありがとう」は「ありがたう」と書くので、「有難う」のままでよいのです。

 最近、レトロ風を気取つてゐながら、時代考証の今一つ甘い「似非レトロ商品」をよく見かけます。かういふのがウケるのは、まだ本物を知らない若者だけでせう。その時代に生きてきた人々(と、私のようなレトロ文化マニア)は、これは偽物だ、と違ひが直ぐ判るものですし、もつと時代考証をしつかりやつて欲しいものです。

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